アガルートの行政書士講座の合格率に問題アリ!

アガルートの行政書士講座は令和元年度の合格率が72.7%になっていて、素晴らしい講座なのかと思ってホームページなどを見ていくと、問題が山積していることが分かります。

アガルートの行政書士講座は開講したばかりでもないのに、教育訓練給付制度の対象になっていないので、合格率に疑いがあります。

「テキスト」は厚く、「講義動画」は難解、そして「模試」は1回しかないなど、教材全てにおいて合格率を上げるためのセオリーに反しているので、「テキストが薄くて不安」というような不安症の人以外が普通に受講しただけで合格率が上がるとは考えられません。

合格祝いが高額なことで、初学者など多くの人に不公平感を与えてモチベーションを下げているので、合格目前の人以外の合格率は低いはずです。

アガルートの行政書士講座を利用する価値のある人は、「お金に余裕があって信頼できない行政書士講座でも問題ない」「合格目前」「不安症」という条件が全て揃った珍しい人だけになっています。

少数派だけに有利な行政書士講座も、ビジネスモデルとして有用なら社会貢献になりますし、優秀な法曹を育てるならビジネスモデルとして有用でなくとも社会貢献になります。
アガルートの行政書士講座がビジネスモデルとして有用かどうか、優秀な法曹を育てるかどうかについて検証していきましょう。

アガルートの行政書士講座の年収を予想してみる

ビジネスモデルとして有用なら大きな利益を上げているはずです。
アガルートの行政書士講座は年間どのくらいの利益を上げているのでしょうか。

アガルートは株式を公開していないので、同業他社から予測しながら、計算してみましょう。
通信教育では最大手となるベネッセコーポレーション。
2020年3月期の売上は約4500億円で、営業利益は約200億円。営業利益率は4.5%といったところ。
ベネッセコーポレーションはチャレンジなど子供が中心なので参考にするとして、資格予備校大手のTACを見ると、2020年3月期の売上は約200億円で、営業利益は約4千万円。営業利益率は0.2%。
TACは通信教育だけではないので、こちらも参考程度にするとして、同じような境遇であるKIYOラーニングは、2020年6月期の売上が約6億円で、営業利益が約マイナス1千万円。営業利益率が約-2%。

ベネッセコーポレーションは売上高が5000億近くあり、営業利益も約200億円と、儲かっている通信教育社と言えます。業界を代表する企業は儲かり、2番手・3番手は経営が苦しくなるのが普通で、業績を含めて決して楽ではありません。例えば、読売新聞は儲かっていますが、朝日新聞や毎日新聞は苦戦しています。経済情報が中心という独自性を打ち出して毎日新聞に追いついてきたのが日本経済新聞。私の履歴書もついつい読んでしまいます。

このように、業界を代表する企業以外は、独自性を出して利益を出していくことになります。
通信教育ならベネッセコーポレーションですが、大人の資格という独自性で伸びてきたのがTAC、資格予備校のTACとは通信教育だけという違いを出しているのがKIYOラーニングになります。
ただ、通信教育だけで資格取得を教育している企業にフォーサイトがあり、アガルートやKIYOラーニングは2番手・3番手の企業であると言えます。つまり、アガルートもKIYOラーニングと同じように利益が出ていないと予測できます。
売上高は株式を公開しているKIYOラーニングよりアガルートの方が低いと考えられ、18種もの講座を開講していることもあり、メインが司法試験・司法試験予備試験であることも加味しましょう。売上高をKIYOラーニングの半分の3億円とし、行政書士講座はそのうちの5%を担っているとすれば、行政書士講座の売上高は1500万円となります。

別の方向からも検証しましょう。
2019年度行政書士試験合格者インタビューに答えているのは54人。合格率が72.7%なので、受講生は74人程度。インタビューに答えない人もいるでしょうが、合格祝いの金額の差から、答えた人の半分もいないと思われます。受講生は100人程度でしょう。
アガルートの行政書士講座の価格帯はキャンペーンを加味すれば8~20万円程度なので、平均15万円とすれば、100人で1500万円。偶然の一致ですが、同業他社から導き出した数値と同じになりました。

講師2人の給料が安く見積もって600万円x2=1200万円で、他に年収150万円のパートを二人雇ってしまえば、教材開発・作成費は0になってしまいます。
さらに72人に合格祝いを出しているなら、54人x15万円+18人x5万円=900万円が赤字を増やしています。
恐らく赤字は2000万円程度になるのではないでしょうか。
ビジネスモデルとして有用とは言えません。

アガルートは行政書士の参考書的にはどう?

司法試験では、合格するための勉強だけでなく、広く学べと言われますが、年1回の試験なので、合格優先になってしまっています。ましてや行政書士試験では、優れた法曹になるための理論に触れることは難しい状況です。

行政書士試験のテキストは、合格するための知識だけに絞っているので、少し離れて参考書を手にしてみましょう。
行政書士試験では会社法を扱いますが、実際の計算までは要求されません。しかし、会社法の参考書にはしっかりと載っていますので、説明します。

会社法では、株主に配当する際、様々な制約があります。利益がないのに株主に配当する行為は蛸配当と呼ばれ違法とされます。
何故違法なのでしょうか。
株主は会社の所有者なので、会社の財産を好きに扱っても良さそうに思えます。しかし、会社が法人として成立すると、従業員や顧客、取引先といった多くの人との関係が生じます。

こういった人たちをステークスホルダと呼びます。
会社の債権者もステークスホルダなのですが、資産が1億円あるから1000万円融資したところ、債務不履行に陥って財産を整理したところ1円も残っていなかったとなってしまうと、債権者が大損してしまいます。
利益がないのに配当してしまうと、資産を食いつぶしてステークスホルダに害があるので禁止されているのです。ステークスホルダの不利益を禁止していると考えれば、債権者以外のステークスホルダの不利益も禁止していることになります。

つまり、アガルートなら、現在の受講生だけでなく、将来の受講生もステークスホルダに該当するので、受講生に対する背信行為は禁止されるべきことになり、当然法曹としてやってはならないことになります。
上記のことからアガルートの行政書士講座は赤字の可能性が考えられます。また、現在の受講生に対して高額の合格祝いを出すことは、不合格の方や将来の受講生にとって不利益となるので、法曹を育成する機関として適切でないと言わざるを得ないのです。

アガルートの行政書士講座の合格率は信頼しない方が無難

教育機関が提示する合格率は、その教育機関が作成した教材でのみ学習した受講生の合格率と考えてしまいがちです。

合格率が高いと、その教育機関で作成されている教材が他の教育機関に比べて優秀であると推測し、一般的に合格率が上がらない勉強方法であっても、勉強方法について良く知らない受験生は、その勉強方法が正しいと勘違いしやすくなります。

さらに、70%を超える合格率を目にすると、「受講しなければ損するかもしれない」と考えてしまい、合格率に疑念があっても、その疑念を打ち消すような情報ばかりを探して、盲目になってしまいます。

そして、自分の決断が間違っていたと認めたくないために、不合格になっても、「自分の努力が不足していた」「たまたま運が悪くて不合格になった」と、不合格の原因をあやふやにしてしまいます。不合格の理由があやふやな上、合格祝いを貰えなかったことが悔しくなり、翌年もアガルートの行政書士講座を受講することになりそうです。

これは株式投資で使われる「ナンピン買い」に似ています。「ナンピン買い」とは、所有株の株式の価格が下がった時に追加で購入すると、平均取得価格が下がるため、損を取り戻しやすくなると考えられています。
初年度に受講料を15万円支払い、不合格だったので翌年も15万円支払って合格した場合は、総額30万円支払ってから合格祝いで15万円戻ってくるので、損は15万円になります。
2年目は同程度の価格の行政書士講座に乗り換えて合格した場合、支払いは30万円ですが、合格祝いがないので、30万円のマイナスになってしまいます。

「ギャンブラーの誤謬」という現象があるのですが、例えばコイントスで10回連続表が出た場合に、次は裏が出やすいと誤信してしまうことを指します。
アガルートの行政書士講座を2年続けて受講して不合格だった時に、「合格率72.7%で2回不合格だったのだから次は高確率で合格する」と考えて、3年目も続けて受講してしまうのは「ギャンブラーの誤謬」に当たります。

合格率72.7%で3回連続不合格になる確率は約2%です。98%合格するなら3回目は絶対にアガルートの行政書士講座を受講すると考えたくなるでしょうが、3回目の受験の時でも合格率は72.7%。大数の法則は、試行回数が少ない時は役に立たないことが多いのです。

しかし、「合格率72.7%」と「合格祝いで全額返金」が悪いことだと考えてしまえば、アガルートの行政書士講座を受講しないという自分の決断が間違っていなかったと思いたいだけになってしまいます。
どうすれば良いのでしょうか?

「合格率72.7%」を信用せず、「合格祝いで全額返金」はないものという前提で評価すれば良いのです。
仮に合格率が全国平均より多少上になる程度の15%で、合格したら合格祝いは家族に全額プレゼントするという前提にして、それでもアガルートの行政書士講座を受講するかどうかを決めるべきなのです。

盲目的に信頼しないのは法曹にとって必要な素養なので、「合格率72.7%」と「合格祝いで全額返金」は、法曹になるためにアガルートが課した試練なのかも知れません。